第十四回:「なぜなにダンジジャー…?」 |
「あぁ?なんだぁこれ…?」 |
「おぉい、なんかこんなもん落ちてたんだけどよぉ」 | ||
「落ちているものを拾ってくるなんてお里が知れやすねぇ…」 | ||
「そんないきなり嫌味言わなくてもいいじゃねぇか! 入口に落ちてたし、手紙っぽいし、気になるだろぉが!」 |
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「拾ってきたものは仕方ありませんわ。 ところで、どなたから、誰宛てのお手紙ですの?」 |
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「それがよぉ…宛名が書いてねぇんだ」 | ||
「宛名も書かないなんて不躾な手紙ですねぇ…」 |
「お前たち、そんなところで何をしておるのだ?」 | ||
「瑠璃さま!…実はなんだか怪しいお手紙が落ちていたそうなのですが…」 | ||
「ほぅ、手紙とな。して、誰宛てのものなのだ?」 | ||
「それが宛先不詳でしてねぇ…いったいどうしたものかと考えていたところです」 | ||
「ふむ…ひとまず開けてみてはどうか?」 | ||
「じゃぁ、開けてみっかぁ」 |
「びりびりに破きましたわね」 | ||
「もう少し上品に開けることはできないんですかねぇ…」 | ||
「うるっせぇよおめぇらぁ!中身は破けてねぇんだからいいだろぉが!」 | ||
「まぁよいよい。中には何が書いておるのだ?」 | ||
「えぇと…なになに?…はぁ?」 | ||
「どうしたんですの?何が書いてありますの?」 | ||
「もったいぶらずに早く読んで下せぇ」 | ||
「あー…なぁんか…俺様たちへの質問が書いてあんだけどよぉ… いったい何なんだぁ?」 |
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「質問とな!我らに質問とは…風変わりな者がおったものよのぅ して、いったいどのような質問なのだ?」 |
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「えぇと…こういう…」 | ||
「ほぅ…成程… せっかくだ。答えてやるとしようかの」 |
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「ええっ!?誰からのものかわからねぇのに… つぅか、ダンジジャーからの罠ってこともあるかもしれねぇのに、いいんすか?」 |
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「よいではないか。知られたところで負ける様な我らではなかろう?」 | ||
「…それもそうっすね」 | ||
「むしろ、返り討ちにして差し上げますわ!」 | ||
「話がまとまったようなので、早速答えていくとしやすかね」 |
「墨で描いたものは墨で出てくるに決まってやすよ」 | ||
「…それだけですの?」 | ||
「それだけですが…?」 | ||
「もっと他にねぇのかよ。面白げがねぇなぁ」 | ||
「ただ質問に答えただけでこの言われようとは…解せませんねぇ…」 | ||
「千草よ、もう少し具体的に説明してみてはどうかのぅ? 他人に説明する時は、分かりやすくせねばならぬぞ」 |
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「…瑠璃之丞さまがそう仰るなら…仕方ありませんねぇ」 | ||
「しゃーなしかよ」 | ||
「蘇芳は黙っててくれやすか…さて、自分の墨絵ですが… この壺に入った墨を使って絵を描くことで具現化することが出来やす」 |
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「その墨だけでいいんですの?」 | ||
「ああ、墨だけではなく、この巻物に描くことで、ですねぇ」 | ||
「んん?つぅことは、おめぇからその墨と巻物を奪ったら 誰でも出来るってことかぁ?」 |
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「残念ながらそれは出来ませんよ。 自分しか使えねぇように特殊な術式を編んでますんで」 |
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「そうなのであるか…我も少し興味があったのだが…」 | ||
「瑠璃之丞さまのためなら、何でも描いて差し上げやすよ」 | ||
「でもあれだよなぁ。千草が描いた絵の本物が出てきても、 下手糞すぎてなにがなにかわからねぇよなぁ!」 |
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「そうですわね。この間も、虎を描いたはずだったのに、 犬が出てきた、ということがありましたわね」 |
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「まったく…酷ぇ言いようですねぇ… どうせ自分は絵が下手ですよ」 |
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「そうかのぅ…千草の絵…我は良いと思うのだが…」 | ||
「そう言って下さるのは瑠璃之丞さまだけですよ…」 |
「いかん。そろそろ“どらま”の“さいほうそう”が始ってしまう。 すまぬが一旦、お開きにしてもよいかの?」 |
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「もうそんな時間でしたか…では、一旦質問は置いておきやしょうか」 | ||
「そうだなぁ…じゃぁまた後でっつーことで」 | ||
「それでは、姫はお茶を淹れてきますわね」 |
「…そういえばさっきからなぁんか見られてる気がすっけど… 気のせいかぁ…?」 |