昼休み。前日の約束通りすみれと香蓮は、屋上で一緒にお昼を食べていた。 「うわ~、スゴ~い!すみれちゃんのお弁当、キレイだしおいし~」 「ありがとう。でも、たいしたものは入ってないのよ?きっと香蓮もこの位なら作れるわよ」 「そうかな~。かれん、どうしてもお菓子以外は上手に作れなくて。ママに教えてもらっても失敗ばかりなんだ」 「最初はそんなものよ。私も料理を始めたばかりの頃は失敗ばかりだったもの。よく妹と弟にまずいって怒られたわ」 「すみれちゃんはどうやって上手くなったの?」 「なにも特別な事はしてないわ。ただ続けている内にまともな料理が作れるようになっただけ。だから、香蓮も練習すればきっと大丈夫よ」 「そうだよね。やっぱり練習しないと上手くならないよね。かれんももっと頑張らなくちゃ。あ、そうだ!今度、すみれちゃんにお料理を教わりたいな」 「え、私?」 「うん!だって、すみれちゃんのお料理スゴくおいしいもん!……ダメかなぁ?」 「ダメだなんて、そんなこと。私でよければ喜んで。でも、香蓮のお弁当もすごく美味しいじゃない。お母さんに教わってるんじゃないの?」 「う~ん、ママのお料理の仕方って普通じゃないらしいの。パパが、あのやり方でなんで美味しいご飯ができるのか理解できないって言ってた。だから、ママ以外の人の料理も見てみたいなーって思ってたの」 「そ、そう。普通じゃない方法って一体なんなのかしら……」 「ねー」 「ねーって、香蓮が言ったんじゃない。・・・・・・ふふっ。分かったわ。それじゃあ今度、私と一緒に料理、してみる?」 「うんうん!やったぁ!ありがとね、すみれちゃん!」 「どういたしまして。そういえば話は変わるんだけど、今日の香蓮、休み時間になるたびに慌てて教室から出て行ってたけど、なにかあったの?」 「んー?あれはね、お友達のお手伝いに行ってたの!」 「手伝い?それってなんの――」 すみれが香蓮に質問をしようとした矢先、予鈴が校舎に響き渡った。 「いけない!もうこんな時間!早く教室に戻らなきゃ!ほら香蓮、急いで」 「う、うん。えへへ、すみれちゃんと話してるとあっという間に時間が過ぎちゃうね」 結果として2人は授業に間に合ったが、慌しく切り上げてしまった為か、すみれの質問は香蓮に告げられる事なく空に消えてしまった。
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