「う~ん」 桜映は自室でノートを広げた机に向かって唸っていた。 彼女は新しくてインパクトのある勧誘方法はないか必死に考えていた。 香蓮と2人で勧誘を始めて約1週間。結果としてメンバーは1人も集まらなかった。 勧誘できる時間は限られている為、全生徒に声を掛けたわけではないが、それでも大多数の生徒がダンスチームのメンバーを募集していることは知っているはず。 それは桜映と香蓮、そして咲也の共通認識だった。 「う~~ん。やっぱり一番いいのは実際にダンスを見てもらうこと……なんだろうなぁ。でも、あたしはまだ全然へたっぴだし……。どうすればいいんだろ」 なにかいい方法はないか香蓮と咲也にも相談したが、芳しい答えは出なかった。 ダンスチームを作ることを諦める気は毛頭ないが、いままでと同じ事をしているだけでは難しいと、桜映も理解していた。 「う~~~ん。よしっ!とりあえず思いつくことは全部やろう!考えるより、まずは行動しなくちゃ!うん!もうひと頑張り!」 自分の頬を軽く叩いて、再び桜映は机に向かった。 一方その頃、香蓮もまた、自室で頭を捻っていた。 「インパクトのある勧誘方法……そんなのあるのかなぁ」 インターネット等で色々と調べてみたが、ピンとくるものはなかった。 「さえちーの言ってた通り、ダンスを見てもらうのが一番効果的だと思うけど……」 そう呟いて、香蓮はPCに保存してある動画ファイルを開いた。それは、桜映がダンスに熱中するきっかけとなった<蒼牙>のステージの様子だった。 「さえちーや、かれんが……こんな風に踊れたら、メンバーもすぐに集まるのかなぁ」 桜映だけでなく自分の名を無意識に挙げ、香蓮は小さくため息を吐いた。 そのまま動画を最後まで視終えると、よしっと香蓮は両手で握り拳を作った。 「弱気になっちゃダメだよね。もう一回調べてみよう!さえちーや東先生も考えてくれるって言ってたし、かれんも頑張らなきゃ!」 動画ファイルを閉じて、香蓮は再び勧誘方法を調べ始める。 時刻はもう24時を回ろうとしていた。
|