「そういえば――」 ひとしきり笑った後、すみれが真顔になって声を上げた。 「私たちのチーム名、決めてなかったわね。学校に届出を出すときやこれからのことを考えると、早めに決めておいた方がいいんじゃないかしら」 「あぁ、それなら実は俺が――」 「はいはい!ピンク・ダンサーズってどうかな!?」 咲也がなにかを言おうとしたが、桜映の大きな声でその事は誰にも気付かれなかった。 すみれが桜映のチーム名に疑問を返した。 「ダンサーズはともかく、なんでピンクなの?」 「あたしが好きだから!」 「却下」 「なんでー。すみれちゃん、却下早いよー。ぶーぶー」 「じゃあじゃあ、ミックスケーキってどうかなぁ?」 「香蓮、確かにかわいいとは思うけど、なんだか違わないかしら」 「えぇ~?そっか、残念だなぁ」 「桃牙!」 「蒼牙の真似じゃない。桜映はもう少しちゃんと考えなさい」 「うっ。それじゃあ、すみれちゃんはなにか考えてるの?」 「えっ?……その、花護宮ダンスチーム、とか」 「えぇ~?そのまんまだし、かわいくなーい」 「い、いいじゃない!学校名も入ってるし、わかりやすいでしょ!」 「えええ~~~?」 「2人とも仲良しさんだねぇ」 「それが駄目なら、えっと……。あ!花護宮舞踏団ってどうかしら!?」 「すみれちゃん……。もしかして、ネーミングセンスない?」 「なっ!?」 「すみれちゃん、顔真っ赤だねぇ」 そんな調子で3人が様々な案を出すものの一向に決まらぬまま、休憩時間の終わりが近付いてきた時、咲也が再び声を上げた。 「おーい。3人ともいいかな」 3人が自分を向いてから咲也はゆっくりと話し始めた。 「実はさ、水川さんと芳野さんがチームに入ってくれればいいなって思って、俺も君たち3人のチーム名を考えてたんだ。個人的には結構気に入ってるんだけど、聞いてくれるかな?」 その言葉に、3人ともぽかんとしていたが、いち早く桜映が応えた。 「聞きたいです。先生が考えた私たちのチーム名」 「ありがとう。――春日さんは桜。水川さんは菫。芳野さんは蓮。3人とも名前に花が入っている。3つの花は色もカタチもバラバラかもしれない。でも、3つの花を束ねればそれはひとつの花束になる。君たちにはこの3人にしかできない、3人でひとつのダンスを踊って欲しい。」 「3人で、ひとつの……」 「あぁ。そんな君たちのチーム名は花束を意味する――<ブーケ>がいいと、俺は思う」 咲也が話し終えても3人はすぐには言葉を返せなかった。 しんとした空気に不安そうに愛想笑いを始めた咲也を見て、ようやく3人は口を開いた。 「先生、あたし感動しました!あたしもブーケがいいです!!」 「かわいいお名前だよね。かれんも大賛成!」 「まったく……。決めていたのならもっと早く言って下さい!そうすればこんなに時間を使わなかったのに!」 「ご、ごめんなさい」 「……でも、素敵なチーム名だと思います。私も気に入りました」 すみれの言葉に思わず謝っていた咲也だが、続く言葉を聞くと嬉しそうに顔を綻ばせた。 「よーし、これでチーム名も決まったね!」 「ええ!」 「うん!」 桜映の呼び掛けに、すみれと香蓮が応える。 「先生!これからは<ブーケ>として、みんなで頑張りましょうねっ!!」
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