「全くキミたちは……。これから僕がキミたちのトレーナーになるんだからな?そこのところ、忘れないように頼むよ?」 「仕方ありませんわね。どうやらダンスの知識はあるようですし、特別にトレーナーとして認めてあげますわ」 「ぐっ。ふ、ふん。ここで怒るのも大人気ないしな。大人の余裕で不問としよう」 「…………」 「晶くん?何か言いたそうだなぁ?」 「いえ別に。話を続けてください、先生」 神奈先生は1度咳払いしてから話を続ける。 「コホン。えー、学校へのチーム申請、学内選抜大会へのエントリーは僕の方でしておく。それにあたって、チームリーダーとチーム名を決めておきたいのだが――」 先生が言い切る前に惺麗さんが真直ぐに手を上げて宣言する。 「リーダーはわたくしに決まっていますわ!2人とも異論はありませんわね?」 「好きにしなよ」 「私も惺麗さんがいいと思うわ」 「ふむ、リーダーは惺麗くんと。チーム名はどうする?」 「ええと、去年までは<エトワール>と言うチーム名でした」 「エトワール、星という意味か。悪くないな」 「去年までと同じでは面白くありませんわ!ここはリーダーであるわたくしが、新たに完璧なチーム名をつけてみせますわ!」 「不安しかないんだけど」 「あ、あはは」 晶さんの呟きは聞こえなかったのか、惺麗さんは目を閉じて鼻歌混じりに思案している。 そして、少しすると惺麗さんが楽しそうに声を上げた。 「…………。フフフ、決まりましたわ!わたくしたちのチーム名は、<ステラ・エトワール>ですわ!」 「ステラ・エトワール?ステラってたしか――」 「星って意味だよ」 「そうよね?それで、エトワールは――」 「うん。星って意味だね」 惺麗さんの考えたチーム名を聞いて、思わず出た私の疑問へ晶さんが返す。 そして、呆れたように晶さんは続ける。 「イタリア語とフランス語……。バカ丸出しだね」 「何を言うのです晶!わたくしたちはどんな星よりも美しく輝くのですわ!……あぁ!完璧すぎる自分のセンスが恐ろしいですわ!!」 「ワンダフル!素晴らしいチーム名だ、惺麗くん!僕たちのチーム名はステラ・エトワールで決定だ!」 「オーッホッホッホッホ!」 「ハーッハッハッハッハ!」 惺麗さんと神奈先生はとても嬉しそうに高笑いを続けている。 その様子を見て、諦めた様子の晶さんが私に話し掛けた。 「……僕は気にしないけど、須藤さんはあの名前でいいの?まぁ、あの様子だと変えるのは難しそうだけど」 「――ええ。エトワールの名前を残してくれた事も嬉しかったし、由来も素敵だったから。ふふっ」 「そう。じゃあ決まりだね」 私は晶さんの問い掛けに笑顔で答える。 その返事を聞いた晶さんも、なんだか笑っているように私は見えた。 「よし、それじゃ僕は早速学校側にエントリー書類を提出してくる!学内選抜大会に向けて、明日から練習を始めるからな。明日もこの教室に集合するように。さらば!」 神奈先生はご機嫌のようで、矢継ぎ早に連絡事項を伝えると教室から出て行った。 その後、私たちも今日のところは解散する事となった。 校舎から出て夕方の空を見上げれば、既にいくつもの星が輝いている。 その星に目を奪われながら私は自分に問い掛ける。 今日、私立聖シュテルン女学院高等部に生まれたステラ・エトワールと言う名の新星はこれからどうなるのだろうと。 「きっと、惺麗さんも晶さんも、一番輝く星になるって言うんだろうな。ふふっ」 勿論、私だって同じ気持ちである。 「これから、もっと頑張らないとね」 思わず声に出しながら歩いていると、校門が見えてきて思わず足を止めた。 先月の卒業式の日は、必死に自分を奮い立たせてこの校門に背を向けた。 だけど、これからは違う。 新しいメンバーと新しいチームで、新しいダンスを始めるのだ。 胸を張って校門を抜け、私は夕焼けに照らされた校舎をあえて振り返った。 「ここから、私たちはスタートするのよね」
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