Trinity Tempo -トリニティテンポ- ストーリー


「えー、コホン。みなさん、この度はあたしのお悩み相談会にお集まりいただき、ありがとうございます! 虎谷さんは2回目ですね」
「ああ。よろしく頼む」
「……ん」
「長門さん、よろしく」
「あ、和泉さん。前回ぶり」
「久しぶり。前回は、まぁ……何も解決しなかったけど、今回は春日さんの悩みに答えが出せるようにアドバイスできればいいかな」
「私も。できる限りで」
「長門さんは物知りだって聞いたから、頼りにしてるよ!」
「聞いたって、もしかして美柑に? もう……大したことは言えないと思うけど、よろしく」
「うん! それからそれから、正宗さんと毒島さんも来てくれてありがとうございます!」
「相談なら有瓜ちゃんの方が頼りになるけど、私でよかったら」
「無責任なことは言わない。内容によるわ」
「うん! ありがとうございます!」
「それで春日さん、悩みって?」
「えっと……悩みっていうか、もしかしたら、あたしだけなのかも? ってことなんですけど」
「構わない、言ってみてくれ」
「ん」
「すみれちゃんはお姉ちゃんで、香蓮にはお兄ちゃんがいて、お休みの日に一緒に遊びに行ったとか、お兄ちゃんとこんなことがあったとかって、おうちの話を聞いたりすることがよくあるんですけど」
「ああ、兄弟のことなら惺麗や須藤さんもよく話してくれるよ」
「理央奈も妹の話をすることがある。そういうときは、私たちに見せるときとは違う顔をしたりするな」
「リオナ、楽しそう」
「そうなんです! あたしそれがなんだかいいなぁって、うらやましくて! あたしにもお姉ちゃんがいたらよかったのにって、晶ちゃんや長門さんや正宗さんは思ったりすること、ない?」
「まぁ……たまにならあるかな。一人っ子だと親が干渉してくることが多いから」
「私は美柑がお姉ちゃんみたいなものだから。でももし美柑がいなかったら、そんな風に思ったかも」
「私はよく思ってるよ。有瓜ちゃんの妹になりたいって。……なりたいなぁ」
「戸籍だけなら養子縁組で実現可能だけれど」
「詳しく調べたことがあって……有瓜ちゃんのお父様からは『50年気持ちが変わらなければ考えよう』と仰っていただいています」
「なら、次は当人以外の感情面ね」
「そうなんです……手強い相手がいて。相談に乗ってもらえますか」
「パス。手に負えないわ」
「えっと……どこまでが冗談?」
「さあ」
「あと38年と少し……です」
「だとしたら11年前の約束だから……正宗さんが4歳のとき? まさかね」
「うふふ」
「50年って長いねー! あたしそんな先のこと考えたことないなぁ」
「ふむ、50年先の未来か。ダンスはどう進化しているだろう」
「表現に限界はないですからね」
「ん」
「そうだな。若輩の私がおこがましいことではあるが、いずれダンス界を牽引していく存在になるため日々研鑽を積んでいこう」
「蒼牙が若輩だなんて誰も思ってないでしょうけど――学びの姿勢は共感できる。将来ダンス界を牽引していく存在としてね」
「ダンスで天下布舞するのは有瓜ちゃんです……」
「あたしも頑張るよ!」
「……話が脱線してないかしら」
「!」
「そうです、ええと――春日さんの悩み相談でしたよね。チームメイトの兄妹の話が羨ましくて、それで?」
「そうそう、みんなの話を聞いてたらうらやましくて――あたしも、お姉ちゃんが欲しくなっちゃって! それで――」
「ん?」
「……ん」
「……」
「虎谷さん、鮫坂さん、毒島さん。お姉ちゃんって呼ばせてください!」
「あ、これってそういうメンバーだったんだ」
「一人っ子のみんななら、あたしの気持ちも分かってくれるかも? って。えへへ」
「私は一人っ子じゃないけれど」
「毒島さんはお姉ちゃんって呼ばせてもらいたかったから来てもらいました!」
「そう」
「別に構わない。アリサも問題ないそうだ」
「……ん!」
「鮫坂さんが飛び込んで来いとばかりに腕を開いている……」
「ありがとうございます! それじゃあ……アリサお姉ちゃん!」
「ん」
「頭を抱えて撫でてる鮫坂さんなんて……もしかしなくても珍しい姿では」
「……よーし、よーしよし」
「大型犬を甘えさせているようだわ」
「そうかもしれないな。どちらにしても、なかなか見られない姿には違いない」
「虎谷さんもいいですか?」
「ん? ああ……うむ。よし。来い!」
「行きます! 大河お姉ちゃーん!」
「ああ!」
「大河お姉ちゃーん!」
「ああ!」
「……虎谷さん、照れてる」
「いや、照れてなど……いない、こともないな。これは経験したことのない気持ちだな。ファンの声援ともステージの歓声とも違って落ち着かないが……春日はこれで良いのか?」
「ばっちりです、大河お姉ちゃん!」
「そうか。期待に応えられたようで何よりだ」
「そして最後は、毒島さん! 迷惑じゃなかったら」
「不思議と断れないのは何故かしらね」
「まさかのオッケー!」
「さすが春日さん……あなどれないね」
「それじゃあ――ミチルお姉ちゃん!」
「……お姉ちゃん呼びは新鮮ね」
「弟さんからはどう呼ばれてるんですか?」
「姉さん呼びが多いわね。昔は姉貴と呼ばれたり呼び捨てだったりしたこともあったけれど、なくなったわ」
「……おねえさま」
「悪い気はしないわ」
「晶ちゃんもいまならチャンスだよ!」
「チャンスって。別に呼びたいわけじゃないけど――いや遠慮とかじゃなくて。僕に妹属性はないから!」
「私は、お姉ちゃんは美柑がいればもう十分。それより妹が欲しいかな。弟でもいいか」
「ああ、弟は私もいたらいいなと思う。一緒にスポーツを観に行けるような性格だったらなお嬉しいな」
「弟もいいなぁ。妹だったら一緒のチームでダンスして、弟だったら別のチームでダンスだね」
「結局ダンスじゃないか」
「えへへ」
「……結局、春日さんの目的は達成できたってことでいいのかな」
「うん! みんな、ありがとうございました!」
「……今気づいた。僕たち何もアドバイスしてないね」
「そういえばそうね……」
「アドバイスが欲しかったというより願望だったから……賑やかししかできなかったね」
「そんなことないない! みんながいて心強かったよ」
「ならいいけど」
「すっごく楽しかったからまたやろうね!」
「私は遠慮するかな」
「僕も」
「うん、私も」
「あれー!?」

–END–

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