ダンジジャー 質問18
 第十八回:「今まで受けた一番のカルチャーショックって?」
「おい…まぁたなんか落ちてたぞ」
「おや、またですか。いったいどういうことなんですかねぇ」
「本当ですわね。誰が何の目的でこんなことを…」
「まぁ折角だし答えてやるかぁ…」


「そもそもよぉ…“かるちゃーしょっく”ってなんだよ?」
「さぁ…?新しいお菓子の名前なのではなくて?」
「そんなことだろうと思って調べてきやしたよ」
「調べてきたって…てめぇも知らねぇんじゃねぇか」
「煩いですねぇ…知らないから調べたんじゃねぇですか」
「まったく、くだらない事で喧嘩をしないで頂けます?
 で、千草。“かるちゃーしょっく”とはいったい何ですの?」
「ええと…辞書によると“自分とは異なる考え方・習慣・生活様式などに
 接した際に受ける違和感や戸惑い、心理的ショックのこと”だそうですねぇ」
「なるほどなぁ…」
「本当に理解できたんですかねぇ」
「おい…そこまで阿呆じゃねぇよ」
「つまり、自分たちが知らないうちに知らないことだらけになっていて、
 とってもびっくりしたことは何?ということですわね」
「お姫さんは飲み込みが早くて助かりやす」
「おいだからぁ、俺様が阿呆みたいな言い方するのはやめろつってんだろぉ!」


「煩い蘇芳はさておき、千草は何かございます?」
「そうですねぇ…自分は現代の“ニンゲン”が
 筆で文字を書く習慣があまりないことに驚きやした」
「そういえばそうですわね。
 今の時代では、筆で文字を書く方が珍しいとか…」
「筆じゃぁないなら鉛筆で書くのか?
 でもよぉ、鉛筆は昔っからあるだろぉ?」
「あら?今は“しゃーぷぺんしる”というものが使われているようですわよ?」
「“ぼーるぺん”というものもあるそうですけどねぇ」
「“ぼーるぺん”…?なぁんか想像もつかねぇな。
 そんなんで本当に文字が書けるのかぁ?」
「まぁ…筆に比べたら便利なようですよ。墨がいらないようですし…
 まったく…便利な時代になりやしたねぇ」
「はぁ…時代の流れってすげぇな…
 桃はどぉなんだぁ?」
「姫は音楽が様変わりしていたことに驚きましたわ!」
「それは自分も思いやしたねぇ。今の音楽は音が煩くて仕方がねぇですよ」
「そぉかぁ?俺様は結構斬新で良いと思うけどなぁ…」
「まぁ!?…蘇芳とは音楽の趣味が合いそうにはありませんわ…」
「蘇芳は趣味が悪いですねぇ」
「おい、さっきから俺様の扱い酷くねぇか?」
「そんなことありませんわ。きっと気のせいですわよ」
「そうですよ。気のせいですよ。
 そういう蘇芳はどうなんです?」
「俺様はそうだなぁ…一気に時代が変わっちまったことかなぁ…」
「つまりどういうことですの?」
「たったの50年くらい、表に出てこなかっただけで、
 こんなにもキカイっていうのが溢れてて驚いたっつぅか…」
「何を言っているんですか。50年前にもキカイはありやしたよ」
「でもよぉ、今みたいになんでもキカイに頼った世の中じゃぁなかっただろ?」
「まぁ…そうですねぇ…
 ほんの数年でここまで大きく時代が動いたことは今までありやせんでしたしねぇ」
「おう。だからよぉ…まだちょっとばかし頭が追いついてねぇんだよなぁ」
「言いたいことは分かりますわ。姫もたまに戸惑ってしまいますもの。
 …それにしても蘇芳、あなたってとても繊細な方でしたのね」
「ただ単に意気地がないだけじゃぁないんですかねぇ」
「元々精神的に弱そうですものね」
「おぉいてめぇら…それ以上言うと本気で怒るぞ…」


「そういえば…瑠璃さまも
 “かるちゃーしょっく”を受けたことはあるのかしら?」
「う~~~~ん…どぉだろうなぁ…」
「ああ、この間“あぶらあげ”がさらに美味しくなっていると、
 感動していやしたねぇ…」
「瑠璃さまは“あぶらあげ”がお好きですものね」
「だなぁ。でもそれって“かるちゃーしょっく”じゃなくねぇか?」
「そうですねぇ。どちらかと言うと感動の部類に入る感情ですねぇ」


「それにしても、“あぶらあげ”の話をしていたらお腹が好きましたわ」
「じゃぁ今日の飯はきつねうどんにでもするかぁ」
「それはいいですわね!お手伝いしますわ!」
「では自分は瑠璃之丞さまを呼んでくるとしましょうかねぇ」