翌日、桜映たち3人は休憩時間に中庭で咲也と話していた。 内容はもちろん、花護宮高等学校に創立以来はじめてとなるダンスチームが結成された事である。 その話を聞いた咲也は本当に跳び上がりながら喜び、興奮冷めやらぬまま3人を見渡しながら口を開いた。 「それにしても、こんな短期間でメンバーが集まるなんて!こんなに嬉しいのは久し振りだ!」 「ありがとうございます!東先生が手伝ってくれたお陰です!それでですね東先生、こうやってチームもできたので、前に話してたトレーナーの件、引き受けてくれますか?あたし達にダンスを教えてください!お願いします!!」 「お願いします!」 桜映が頭を下げたのに続いてすみれと香蓮からも頭を下げられた咲也はむず痒くなってしまい、頭をかきながら答えた。 「えっと、俺で良ければ喜んで。3人の力になれるように頑張るので、その、なんていうか。あー……こちらこそ、よろしくお願いします!」 咲也が誰よりも深々と頭を下げたのを見て、3人は思わず笑い出した。 最初はバツの悪そうな顔をしていた咲也も、つられて笑い出し、中庭に4人の笑い声がこだました。 「よーし、それじゃあ今日から早速練習開始だね!」 「さえちー、張り切ってるね」 「当然だよ!昨日から待ち遠しくて仕方なかったんだ!あたし、ダンスをやりたいの!この3人で、一緒に!」 元気良く声を上げる桜映を、微笑みながら見ていた咲也がそこで口を開いた。 「えっと、春日さんと芳野さんはダンス未経験なんだよな。水川さんは?未経験って事はないと思うけど」 「私は中学までバレエをしていました。なので、基礎は大丈夫だと思います」 「あたしたちも、まずはすみれちゃんに追いつかないとだね!ね、香蓮?」 「た、大変そうだけど、かれん、がんばるね!」 「ふふっ。大丈夫よ、ダンスの基本は私が教えてあげる」 「すみれちゃん、あたしは?あたしは?」 「はいはい。桜映にも教えてあげるわよ」 「やったー!」 「そうだな。俺が練習に顔を出せない時もあるだろうし、基礎練習に関しては俺と水川さんの2人で進めて行こう。水川さん、よろしく頼むよ」 「はい。わかりました」 「うん。あと、他に決めとかないといけない事は……」 「はい!かれん、ずっと気になっている事があるんですけど、いいですか!?」 突然、勢い良く香蓮が大きな声を上げたのに、軽く面喰らいながら咲也が促した。 「あ、ああ。なにかな?」 「ダンスをする時って衣装を着るんですよね?その衣装って誰が作るんですか!?」 「い、衣装?」 「あ~。なるほど」 「?桜映、香蓮はどうしたの?」 「んー。多分、見てればすぐわかるよ」 桜映だけは香蓮が何を言いたいのか理解できたようだが、すみれと咲也はいまだに状況が掴めていなかった。 香蓮にまっすぐな視線を向けられたままの咲也は黙っている訳にもいかず、口を開いた。 「えーっと、少し先の話にはなると思うけど、いずれは皆にも専用の衣装を着て、ダンスをしてもらうことになる。しかし、衣装の手配か……。やっぱり、業者に頼むのが良いのかな」 「あの!もし良かったらその衣装、かれんに作らせてもらえませんか?もちろん、3人分作ります!」 「ええ!?いや、それは……。ありがたいけど、ダンスの練習もあるのに大変じゃないか?」 「だいじょぶです!かれん、手芸が大好きなんです!」 「東先生。あたし、幼馴染だから良く知ってるんですけど、香蓮ってこうなると絶対に譲らないんですよ。自分の好きな事になると、もうこだわりがすごくって」 「しかしだな……」 「それに、香蓮の作るものってすごくかわいいんですよ。それこそお店のものにも負けないくらい。あたし、香蓮が作ってくれる衣装でステージに立ちたいです」 「さえちー……」 「そう言う事なら私も手伝うわ。香蓮、いいでしょ?」 「すみれちゃん……。うん!2人とも、ありがとう!」 3人の様子を見た咲也が、ふぅと息を吐いてから続けた。 「やれやれ。そこまで言われちゃ無碍にもできないな。無理はしないでくれよ?」 「はい!東先生、ありがとうございます!」 「香蓮、とびっきりかわいい衣装にしてね!」 「うん!衣装のことならかれんにお任せだよ!」 「桜映?あなたも衣装作りを手伝うのよね?」 「う、うん。か、簡単な事ならなんとか……」 「さえちー、不器用さんだもんねー」 「あー、香蓮ひっどーい!」 そこで再び、4人の笑い声が中庭にこだました。
|