Trinity Tempo -トリニティテンポ- ストーリー


「皆さん、集まられたようですので始めさせて頂いても宜しいでしょうか」
「「は~い」」
「「はい」」
「では、改めまして皆さんお集まり頂きありがとうございます。今日はチームの垣根を越えてお話しようという集まりで…」
「……硬いね、水川すみれ」
「え…そ、そうかしら?」
「ほら硬い。硬いよ」
「だって先輩方もたくさんいらっしゃるのに、こういう場で私からお話を始めるのって初めてで…」
「だからってそこまで緊張しているようじゃあ、キミも大したことないね、水川すみれ」
「いやいや、そういう和泉さんも硬いな~」
「そうね。水川さんの緊張をほぐしてあげるにしては、和泉さんも硬いと思うな」
「そ、そんな…僕は別にそんなつもりじゃ…」
「硬い。硬いなあ和泉さん! いや、晶ちゃんと呼ばせてもらうね、晶ちゃん!」
「鳴宮さんまで……僕は別に緊張なんかしてないし、どこが硬いんですか」
「その表情だよ! ねえ、みんな」
「そうそう、こわ~い顔になっちゃってる。はるちゃんが何かやらかした時のミチルちゃんみたい」
「ゆずとあたしが喧嘩しちゃって困ってる時のまいまいみたいでもあるな」
「そうなって来ると、アレかな。あたしが有瓜ちゃんと話してる時の葵ちゃんみたいな…」
「桐栄ちゃん、それはどういう意味?」
「いえいえ、なんでも無いですよ~」
「今の正宗さんの顔も晶ちゃんとおんなじだったな~。あ、それよりさあ、正宗さんも葵ちゃんって呼んで良い?」
「え…あ、はい。だいじょうぶ…です…けど…」
「よしよし! 葵ちゃんも、晶ちゃんも、すみれちゃんも、あたしの事はお姉ちゃんだと思って気楽に接してね! 勿論、桐栄ちゃんもまなぶちゃんもだよ! それと、あたしの事は鳴宮さんじゃなくて美柑って呼んで欲しいなあ。あ、お姉ちゃんでも良いよ!」
「あ、あの~あたしが脱線させといてなんですけど、美柑さん、話変わって来てるんで、その辺で……」
「え? あれ??」
「いやあ、すみません! ほら、すみれちゃん、始めちゃおっか!」
「は、はい。では気を取り直して、今日は間もなくバレンタインという事で、皆さんのバレンタインにまつわるお話を…」
「そうだバレンタインだった! 良いよね大好きだよ~。この時期っていろんなお店でチョコレート味のお菓子が出て来るでしょ?」
「うちの地元はのんびりしたところだけど、今はどんな小さなお店でも趣向を凝らしたお菓子が出て来るようになってて楽しいんですよね~」
「そうそう! うちも商店街のお店がこぞっていろんなアイデア商品出してくれるから、それが楽しみで」
「ですよね!!」
「最近はお菓子だけじゃなくて、カカオを使ったお料理を出すお店もあるくらいですからね~」
「お料理ですか? ちょっと想像つかないですね」
「わたしも。チョコレートをお料理に?」
「いやいや、チョコだと甘いのに?って思っちゃうけど、原料のカカオは別に甘くないんだよね~」
「そう言われるとそっか…」
「確かに、甘いのは砂糖を混ぜてお菓子にしているからであって、ココアパウダーも本来は甘くないですね」
「なるほどねぇ」
「まあとにかく、そういった新しいものの情報を見るだけでも楽しいイベントではありますよね」
「ですよね~。で、見てると色々買いたくなっちゃう、と」
「いっぱいありすぎて困っちゃう事も多い!」
「確かに、自分で欲しくなるような可愛いものもとっても多いですよね」
「僕は…ここ何年かはバレンタインの期間だけ出る限定パッケージのヤツが美味しくて、自分用にってそれを狙って買うかな」
「限定パッケージかあ。毎年買うって事はそんなに美味しいんだな。ねえ晶ちゃん、どんなのか教えてよ」
「えっと、ショコラ222ってお店の……ネコのパッケージのヤツなんですけど」
「あ、それ、わたしも買った事あります! 3年前だったかな。有瓜ちゃんが動物好きだから。味もすっごく美味しかったって褒めてくれて」
「ほほう…それは気になるな」
「有瓜ちゃんがすっごく喜んでくれたから、よく覚えてます。私も有瓜ちゃんに渡す前に味を確認する為に食べましたけど、とても美味しくて…」
「正宗さんは、毎年長谷部さんに渡しているの?」
「勿論です! 有瓜ちゃん、新しいもの好きだし、珍しいもの好きだし、だから毎年色々なところへ新作を探しに行くようにしています」
「へぇ~、今年はあたしにも回って来るかな?」
「……どうして桐栄ちゃんにあげなきゃいけないの?」
「そのセリフ、真顔で言われちゃうと効くなあ。でも、毎年新しいもの探すの大変でしょ? この桐栄ちゃんの情報網、使いたくない?」
「う……そ、それは…」
「一期さん、自信満々だねえ」
「詳しいんだ、桐栄ちゃん」
「はいはいっ! 新しいものならお任せあれ! この桐栄ちゃん、毎年友達と情報交換しまくって
美味しくて可愛いチョコ、チェックしてますからねえ」
「私は弟や妹、それにお父さんに渡すんですけど、弟や妹も大きくなって来て、最近味にもうるさくなってきたので気になります!」
「ゆ、有瓜ちゃんにあげるものは自分で探したいけど、でも、桐栄ちゃんのお勧めも一応、チェックしたいというか」
「でしょでしょ~! ……あれ? 晶ちゃんは? 気にならない? にゃんこのパッケージ、お勧めのヤツありますよ?」
「そ………それは…とても気になる…と言うか…はい…気になります」
「良いね良いね! そうこなくっちゃ!」
「いろんな友達とか知り合いに渡したり交換するの、楽しいよねえ」
「美柑さんもたくさん渡されるんですか?」
「そう! 友達以外にも、商店街のおじちゃんとかおじいちゃんとかさあ、いっつも良くしてもらってるから御礼にって渡すでしょ。でもそしたらさ、そのお店のバレンタイン商品をその場で貰っちゃったりするから、すっかり物々交換みたいになるんだよね」
「それは楽しいっすね!」
「後はやっぱり、ゆずやまいまいにも渡すかな」
「そっか。チームメイトにも渡すんですね」
「まあ、うちの場合はチームメイトと言うよりは妹とほぼ妹みたいな幼馴染だし、結局みんなで分けっこしたりするんだけどね」
「そういう意味で言うとうちのチームも似たようなものですけど、そう言えばはるは勿論、ミチルちゃんにも渡したこと無いな」
「あ、そうなんだ。でもさ、お互いで渡しあいっこしたら、色々なチョコが楽しめて、楽しいよ」
「確かに…うちの桜映とか、絶対に乗り気になるイベントです…」
「ああ~桜映ちゃんは好きそうだよね!」
「でも、なんか…良く考えると変ですよね」
「え? 変…って何が?」
「いや…だって、バレンタインって、本当は好きな相手にチョコレートを渡して告白するって行事だよね?」
「そう言えば」
「言われてみればそうだね」
「とは言え、最近は友チョコとか、自分へのご褒美チョコの方が盛り上がってるっすよね~」
「確かに、なんだか家族とか友達に渡す前提の話になってる気が…」
「誰も『好きなひと』に渡す目的じゃないと言うか…」
「そう言う晶ちゃんはどうなのよ~」
「僕は学校とダンス、それに自分の趣味で手一杯なんで、興味ないと言うか…」
「まあ、ず~っとダンスに夢中でそれどころじゃない、っていうのは有るよね」
「確かに、何をするにしてもダンスが中心ですもんね」
「わたしは、有瓜ちゃんが大好きだから渡してるんだけど…」
「葵ちゃんはそうだねえ。でも色々見てると、美味しそうなの、いっぱいあるっしょ? 誰かに渡すだけじゃ勿体ないって思わない?」
「有瓜ちゃんに渡す前には、自分で必ず味見はするし」
「でも、それで試すにも限界はあるでしょ? そういう時に、友達や知り合いと情報交換!っすよ」
「遠くのお店でも通販で買えるものもたくさんあるしね」
「それそれ! でも通販って届くまでに時間が掛かったり、試してみてもう一回買うのって大変でしょ?」
「確かに…届いて味見してみて、なんか違うってなって慌てて街へ探しに行ったことはあるけど…」
「そういう時に、友達とか知り合いに先に評判を聞くとか、お互い色々手分けして試してみるのってすごく良いよね?」
「一人だと、探すのにも試すのにも限界はあるか…」
「お金が無限にある訳でも無いですしね」
「まあ、結局バレンタインって、それを口実に、ただ美味しいものをみんなで食べたいっていうだけというか」
「いやいや、それがメインだよね、正直なところ」
「そういう事っす! と、言う訳で」
「と、言う訳で?」
「今から皆でお互いお勧めのチョコの情報交換しません?」
「あ、それ良いね! みんな住んでるところも結構違うし、地元の隠れた名店、とか?」
「確かに…さっき一期さんが言ってたネコのパッケージの、知りたいです」
「皆さんの地元のお店のお勧めとか、すっごく気になります」
「じゃあ、バレンタインにまつわるお話はこの辺にして」
「はい。ぜひ、お勧め情報の交換、しましょう!」

–END–

ページの一番上へ