その日の夜。 お風呂から上がって最新号のファッション誌を読んでいると、アタシの電話にメッセージが届いた。 メッセージを受信したのは、蒼牙の3人で使用しているチャットルームにだ。 ここに投稿されたメッセージはメンバー全員に共有される事になる。 ・アリサ:『タイガ、リオナ。今日の練習もおつかれ~(≧∇≦) 今日はハードだったからアリサ、疲れちゃったよ(;´・д・)』 メッセージはアリサからだった。 相変わらず、チャットだとテンションが高い。 最初に知った時は普段の無口なアリサと同一人物なのか疑ったものだ。 そんな事を考えていると、矢継ぎ早にメッセージが送られてくる。 ・アリサ:『あれあれ?(・_・?) お返事来ないね?(?_?) もしかして2人とももう寝てるのー?_(:3」∠)_』 ・アリサ:『もしもーし?y( ̄◇ ̄[]ゝ え~、ホントに寝てるの?zzz(´-ω⊂゛) 早すぎるよ~(´・ω・`)』 ・アリサ:『もしかして、起きてるのにスルー?Σ(゚д゚lll)ガーン ヒドいよ~(ノД`)シクシク』 この間、僅か10秒足らずである。怖いよ! そのままにするともっと怖いので、アタシから返信を送る。 ・リオナ:『はいはい、おつかれ。アリサ、なにかあったの?』 ・アリサ:『あ、リオナ!ヾ(*´∀`*)ノキャッキャ えっとね、特になにもないよ。(∀`*ゞ)テヘッアリサ、ヒマになっちゃって(*´∀`*)』 ・リオナ:『暇つぶし!?』 ・アリサ:『エヘヘーv(´∀`*v)ピース』 アタシがディスプレイを見ながら苦笑いしていると、デフォルメされた虎のアイコンから新たにメッセージが送られてきた。 ・タイガ:『まったく。アリサにも困ったものだな』 ・アリサ:『あ、タイガだ!( ・∀・)ノ やっぱり2人とも起きてた~ヽ(`Д´)ノプンプン』 ・タイガ:『やれやれ。だが、全員いるなら丁度良い。明日の朝話そうと思っていたが、いま伝えるとしよう』 ・アリサ:『なになに?(?´・ω・`) アリサ、気になるなー(*゚∀゚)(゚∀゚*)』 ・タイガ:『あぁ。先程学校から連絡があった。明日の放課後練習の際に紹介したい人がいるので、必ず全員練習へ参加する事、だそうだ』 ・リオナ:『紹介したい人?誰それ?』 ・タイガ:『さあな。詳細は私も聞かされていない』 ・アリサ:『へぇ~誰なんだろ、気になるね?(-_-)ウーム』 ・タイガ:『答えの出ない事をあれこれ考えても仕方ない。明日には分かる事だ』 相変わらず、サバサバしている。 大河本人はそんな事はないって言ってるけど、やっぱり性格とか男前だよね……。 ・リオナ:『そりゃあ、そうだけどさ』 ・タイガ:『以上だ。特になければ私はストレッチをしなければならないので失礼する。2人とも体のケアを忘れないように』 ・リオナ:『りょうかーい』 ・アリサ:『りょうかーい。(・o・)ゞ エヘヘ、リオナのまねーヽ(・∀・ )ノ キャッキャッ』 ・タイガ:『では、また明日』 そのメッセージを最後に大河のアイコンが消えた。 ストレッチに集中する為に携帯の電源を切ったのだろう。 んー。確かに今日はまだだったし、アタシも簡単にストレッチしとこうかな。 ・リオナ:『アリサ、アタシもストレッチしとくわ。今日はここまででOK?』 ・アリサ:『はーい。ヾ(´▽`*)ゝ もうちょっとお話したかったな~o(*>Д<)ゝ』 ・リオナ:『アタシ達のリーダーは厳しいからねー。じゃ、また明日ねー』 ・アリサ:『バイバーイ(´∀`*)ノシ』 アリサの返信を確認し、アタシは電話を机に置く。 にしても、学校が紹介したい人ねぇ……。 たまにチームの調子を聞いてくる事はあれど、去年から学校側はアタシ達に対して特に何かをすると言う事はなかった。 チーム結成後間もない頃に大河が「自分達の力だけで大丈夫」と学校側へ言い放ったのが原因だとは思うけど、ことダンスに関してアタシ達に学校側のバックアップがさほど必要なかったのも事実だ。 自分で言うのもあれだけど、大河を筆頭にアタシ達3人の実力は一般的な高校生レベルからは大きく離れている。 学校側もそれが分かっているからこそ、特に何も言ってこなかったのだろうけど……。 「紹介したい人ねぇ……。いったい誰なんだか」 ストレッチを終え、1人呟く。 大河の言う通り、明日になれば分かることだけど、気になるものは気になる。 どことなく落ち着かない気持ちのまま、アタシはその日、普段より早くベッドにもぐり込んだ。
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